「冠を持つ神の手」の感想やら妄想やら色々ごった煮です。
無駄にタイトル長いよー。
2009年10月07日 (水) | 編集 |
↓畳んでるSSもどきの説明

!! グレオニー殺害ED前提 !!

「咲けない蕾」の続きに当たります。
(そちらが未読だと話が繋がらない可能性があります。その場合は脳内補完してくださいませ)

グレオニーが牢にぶち込まれてからの話です。
視点はまさかの名無しのあの人・グレオニーの友人衛士。
レハトさんは成人の儀で女を選択、王条件満たしてません。
やや鬱ED気味かもしれません。


最初に思いついたのは、こっちが先だったんですよね。
書いてるうちに、これはレハトサイドの話がないと繋がらん、と気付いて、後からレハトサイドの話(「咲けない蕾」)を書いた、と。
自分がなにしてんのか途中でわけわからんくなりましたorz
脳味噌の容量が少ないのが目下の悩みです。

途中、王様の扱いで右往左往したりとか。
問題になるのが、グレオニーの処刑が継承の儀の前ってところでして。
この時点での王って誰さ。
移譲の儀=6代目指名
譲位の儀=6代目誕生
継承の儀=公式発表(即位の本礼とか披露)
ってことでいいの? あってるの、これ?
(※ 結局考えてもわかんなかったので、ヴァイルってことにしました。適当でごめんなさい)







 焉 の 先 に 続 く 終 わ り な き 道


 グレオニーとの面会が認めれられたのは処刑を三日後に控えた日だった。
 本来なら同僚とは言え、一介の衛士に面会など許されない。それが許されたのは、偏に寵愛者様の口添えがあったせいだ。何を思って仲介をしたのかなど俺は知らない。知らなくていいと思っている。雲の上の人々の考えることなど、いくら考えたところで地を這う人間には解る訳もないのだから。
 実に一月ぶりに顔を合わせたグレオニーは、俺が想像していた様子とはまるで違った。
 窶れてはいるものの身形はきちんと整えられ、それまで重く圧し掛かっていた憑き物が落ちたように晴れやかな笑顔で俺を迎える。この一月の間に何があったんだろうか。
 もっと早くにこうなっていれば、こんなことにはならなかったのに。
「よう、久しぶり。元気そうで安心した」
「まあな。色々面倒かけて悪かった」
「気にすんなよ。と言っても、俺は大したことしてないけどな」
 俺が軽く肩を竦めると、ははは、とグレオニーは快活な笑みを見せた。そう、こいつはこうやって笑うんだ。眉間に皺を寄せて唸ってるなんてらしくない。
 まるで時間が巻き戻ったかのような様子に安堵しつつ、俺はあえて一連の事件に関する話題を避けた。今日までの間、そして今も飛び交っている様々な憶測や噂話、そんなのを聞かせたって何にもならない。
 どうしてこうなったのか。避けられないことだったのか。
 知りたくないわけじゃなかったけど、知ってどうするという気持ちのほうが強かった。
 実力はそこそこなのに御前試合になるとめっきり力が発揮出来なくなるのをグレオニーが気に病んでいたのを知っている。そこから生じた寵愛者様との些細な確執も。
 そして生まれた結果が今で、それ以上でも以下でもない。
 普段訓練場で話しているような、他愛も無い話を交わす。ほぼ聞き役に徹しているグレオニーが時々声を上げて笑う。それだけで十分だろう。例え僅かな時間でも今の境遇を忘れて欲しかった。
 やがて話題も尽き、あまり長居も許されないためそろそろ退席しようかと思った時、グレオニーの右手が素手であるのが目に付いた。
「あれ? グレオニー、おまえ手袋片方どうした?」
「え? ……ああ、これか。ちょっとな」
「ちょっとって、なんだよ。言えばそれくらい用意してもらえるだろ。何だったら俺が差し入れてもいいけど」
「……いや。いいんだ、これで」
 グレオニーは手袋を嵌めていないその手をじっと眺めている。
 その目が酷く優しげなことに気付き、驚く。
 この一年、険しい顔の友人しか見ていなかった。朗らかで人好きのする友人はどこへ行ってしまったのかと、人知れず心配したものだが、俺が案じるまでもなく最初からここにいたらしい。だとすれば、硬い顔のグレオニーは一体どこへ行ってしまったのか。
 俺には見当すら付かない。
 それとも、長いとは決して言えないが、かと言って短いとも言い難い牢生活で螺子が二、三本飛んだのか。

*     *     *

 そしてその日が訪れる。
 雨男の最期には不似合いなほど晴れ渡ったこの日が、グレオニーの処刑の日だった。雨が降れば自然場の空気も湿っぽくもなるだろう。この方が余程グレオニーの気性にはあっている。
 からりと晴れ上がった空に鎮座する太陽の眩しさに目を細めていると、俄かに周囲の雰囲気が変わったことに気付く。僅かな動揺が波紋のように次第に広がった。
 一体誰が一石を投じたのかと皆の視線を辿った先に意外な顔を認めて言葉を失う。
 どうやら寵愛者様も同席するらしい。
 六代リタント国王となられたヴァイル様の隣に設けられた席に、彼女が優美な仕草で腰を下ろす。現れた彼女はこの世のものとは思えないほど美しかった。友への感傷さえ平伏させてしまう程に。足の先、爪の先、髪の毛一本に至るまできっちりと整えられている。およそ、処刑場には似つかわしくない風情だ。
 だがいくらなんでもこれは不味くはないか。理由はどうあれ、彼女こそがグレオニーを死に追いやった張本人だ。グレオニー本人がどんなに納得していても、周囲はそう簡単には納得できない。衛士の中には今回の処断に不満を持つ者もいる。
 かく言う俺だって、心底納得はしていない。先に俺たちの領域を侵したのは彼女の方だ。例えそれが前王に認められたことで、彼女の身の上ではそれが当然の成り行きだったとしても。
 だが、寵愛者様はそれらの視線を意にも介さず、ただたおやかにそこに存在していた。
 何も聞こえないし、何も見えていないかのように。
 ひそひそと囁かれる陰口も彼女にとっては小鳥の囀り程度にしか受け止められていないのだろうか。
 不思議なものを見る気持ちでぼんやり眺めていると、その手に何かがしっかりと握られていることに気付く。ここからでははっきりとは見えないが、どうも布の塊のようだ。処刑場にまで持ち込むほど大切なものなのだろうか。どちらにせよ凡そ相応しい振る舞いではない。
 それにしても、間接的とは言え自分が殺す男の最期を見届けに来るとは、肝が座っている。てっきり来ないものだと思っていた。恐らく、ほとんどの人間がそう思っていたはずだ。それとも己を手にかけようとした男の末路を、その目に焼き付けておきたいのだろうか。
 だとすれば悪趣味だ。
 やがて衛士に伴われたグレオニーが姿を見せた。その片方の手にはやはり手袋は嵌められていない。全身真新しい制服で包まれているのに、そこだけが違和感をもたらす。
 手袋くらい届けてやれば良かった、と後悔しても後の祭りだ。
 顔を上げたグレオニーの視線が、今この瞬間に存在する全てを網膜に焼き付けるようにゆっくりと周囲を見渡す。その動作が不意に止まった。一点を見つめ目を見張ったかと思うと、それから徐に目を細める。
 これから死に行く男とはとても思えない満ち足りた表情に俺は思わず首を傾げた。一体グレオニーの視線の先に何が映っているのか。何があいつにあんな顔をさせたのか。
 気にならないはずがない。
 それを知るために何気なく首を巡らせた俺は、処刑場の中央を見つめ、同じように穏やかに微笑む寵愛者様を見つけて息を飲んだ。
 そこにあるのは、憎悪でも怨恨でもない。
 二人の間に通うのは多分――。
 何がどうしてこうなったのかは知らないが、漸く合点がいった。
 グレオニーが片方だけ手袋をしない理由。
 寵愛者様がこの場にまで持ち込んだものの正体。 
 けれど一度回り始めた歯車が止まることはない。時刻は刻一刻と近付いている。淡々と粛々と、準備は整う。
 やがて、執行役が振り上げた剣が陽光を受け止め鋭く光を発した。

*     *     *

 寵愛者様の急逝が伝えられたのは、グレオニーの処刑から1ヵ月後のことだった。
 理由も死因も俺たちには告げられない。真実を知っているのはお偉い人たちだけだろう。
 話題の大きさと閉鎖性から、城内では当然のように様々な憶測が飛び交った。それこそグレオニーの時の比ではない程に。けれどどれも正解は導けなかったらしい。
 衛士の中には、神の罰を受けたのだ、当然の報いだなどとのたまう奴もいる。
 でもきっとそうじゃない。
 俺の推測が当たっているのだとしたら、単純に届けに行ったのだと思う。あいつの右手の手袋を持っているのはあの方だから。
「先に逝ったあいつが驚かなきゃいいけど」
 そう独りごちて、あの日と同じように晴れ上がった空を仰いだ。

[ 完 ]

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