「冠を持つ神の手」の感想やら妄想やら色々ごった煮です。
なぜこのEDを選んだ、自分。
2009年09月29日 (火) | 編集 |
↓畳んでるSSもどきの説明

!! グレオニー殺害ED前提 !!

グレオニーが牢にぶち込まれてる間の話。
レハトさんは成人の儀で女を選択、王条件満たしてません。
視点はレハトさん。
殺害EDでのグレオニーの最後の台詞から続く感じなので、ED未見の方は要注意です。
やや鬱ED気味かもしれません。


一応、別人視点でこの続きがあります。
おまけにこれを読んでないと「はあ?」ってなること請け合いの不親切設計。
親切設計にしようとしたら出来ませんでしたorz

当然ながら自分でタイトルつけるんですが、最近「蕾」という字を見るとプッと笑う自分がいます。
タナッセは責任を取るべきだと思います。


▼そして今日の心の叫び
待って、だめよグレオニー! いけないわ!!

唐突になにほざいてんじゃわれ、って感じですが。
いや、でもマジでそんな気分になったのですよ!
友達口調で最後の日迎えて、「いいの、あなたの気持ちはわかってるから」(超意訳)を選択するとあんなことになんのか!
いつも全力で全部吐かせてたから知らなかった、知らなかったよ!!
すごい勢いで気が動転したんですが、私は一体どうすれば。
き、今日も、動悸・息切れに効く薬を下さ…い……マジ死ぬる、死ぬるよ……。







 け な い 蕾


 彼はこんな私を好きだと言う。
 彼をここまで追い詰め、やがては死に追いやろうと言う女を。
 けれどそれを笑うことは出来なかった。思い掛けない彼の言葉が、すとん、と胸に落ちたせいだ。
 彼と同じく、篭りの期間は私の頭を冷やすにも充分過ぎる程だった。そうして辿り着いた結論が同じものだったことは、私たちにとって幸福なことなのだろうか。
 私も、多分もっと前から――そう、出会った頃から彼に惹かれていたように思う。
 慣れ親しんだ村から半ば強引に連れ出され、知り合い一人いない場所へと放り出された子どもが不安に思わないはずがない。私とて然り。もう村には戻れないことくらい如何に愚かな子どもでも分かる。帰るところがない以上、ここで居場所を見つけるしかない。だが本当に私の居場所など見つかるのか。城に来た当初は、田舎者よと蔑まれても、唇を噛んで堪えるしかなく、無理な背伸びをしてでも彼らに認められなければならないと、折れそうな心を無理やり奮い立たせていた。
 そんな時に偶然出会ったのがグレオニーだ。
 私の印しか見ていない大人たちとは違う気さくな態度。本当なら一も二も無く縋り付いていたところだ。
 けれど悲しいかな、私は自分が御前試合に出るようになってからというもの、彼の態度が如実に変わった事に感付いてしまった。そして悟ったのだ。彼を私を見る目に宿る感情が憎しみであることに。
 理由は分からない。
 正直なところ、私に心当たりは無く、彼の向ける視線が酷く冷淡であることに戸惑いさえした。だがそんな戸惑いもどこへ行ったのか、気が付けば売り言葉に買い言葉で、彼を罵倒し嘲笑していた。
 そうする方法しか私は知らなかったのだ。
 今になって思えば幼かったのだと思う。
 自分を明らかに憎んでいる相手を愛す事など到底出来ないと思った。私を嫌っているのなら、こちらも嫌ってやろう。その程度の軽い気持ちで彼に突っかかるようになり、挙句の果てにこの様だ。恐らく、好きだったから余計にその思いは強かったのだろう。
 好意を向けても見てもらえないのなら、憎悪を向けることでこちらを向かせようとした面もあるのかもしれない。
 何にせよ今となってはどれでも不確かで、自己弁護の鍍金が剥がれた後に私の手の平に残ったのはグレオニーに対するひとひらの愛情。
 最初から歴然とそこに存在していたのに今になって気付くなんて。
 取り返しの付かないことをした。彼の死を願ったことなどなかったのに。
 そう、現状を作り出したあの告発でさえ彼の死を望んだものではなかった。ただ無性に胸の奥が苦しくなったせいだ。自ら蒔いた種とは言え、死んでも構わないとまで思われていたことに少なからず衝撃を受けたせいだ。
 我ながら勝手なものだと自嘲の笑みが浮かぶ。
 随分、子どもじみた方法だったと改めて痛感する。今分かったところで何の助けにもならない事も。
 思えば私も彼もとても不器用だったのだ。どこかで歩み寄る決心をすれば良かっただけなのに。
 いつの間にか私の眼からはとめどなく涙が零れていた。
 嗚咽の間に謝罪と告白を繰り返す。
 グレオニーは黙ったままそれを受け止めていたがやがて、私の告白に困惑しつつ、それでいてどこか嬉しそうな面持ちで口を開いた。
「レハト様、聞いていただけますか。俺はこうなって良かったと思ってるんです。ここにいて、本当は貴方が好きだったんだと気付けて、本当に良かったと思います。気付かないまま貴方を恨んで憎んで生きる方が、きっとずっと辛かった。それに……貴方も同じ気持ちだと言って下さるなら、俺はこの国一の果報者です」
 穏やかな口調と眼差しが嘘偽りの無さを告げていた。
 この言葉がもっと早く聞けていたら違う今があっただろうか。否、私自身が己の気持ちを悟るだけでも随分と違ったろうに。
 時には、遅きに失する、ということもあるのだと学ぶにはあまりにも辛い現実だ。
 私は際限なく流れ落ちてくる涙を手の甲で拭った。
 何か形見が欲しい。
 そう言うと、グレオニーは些か困った顔をする。
「ご覧の通り、差し上げられるような物は何もなくてですね……」
 グレオニーが慌てて周囲を見回すが、罪人に最低限必要なもの以外が与えられるはずもなく、いくら見たところで牢内に私物はないと言えた。グレオニーの部屋に行けば何かあるだろう。けれど私は今――自分の内側と向き合い、彼への想いを確信した今この瞬間に、彼の手から何か欲しかった。人伝にもらっても意味が無いし、一体誰が私に届けてくれると言うのか。私たち以外は、私と彼は犬猿の仲だと思っているのだから。
 困った顔で私を見た彼が、不意に何かに目を留める。
「あ……あの、手袋。手袋でよろしければ、貰って頂けますか?」
 私に否やはない。
 グレオニーは填めていた手袋の右手側だけ脱ぐと、そっと私に差し出す。檻の隙間からそれを受け取った。胸に抱いたそれにまだグレオニーの体温が残っている。それがとても愛おしい。
 私が微笑むと、応えるようにグレオニーも笑う。
 ああ、私は長いことこの顔を見ていなかった。
 包み込む幸福感に全てが満たされるのが分かる。
 でもこの時は長くは続くない。終わりが約束されている。私たちはこの瞬間も終末へ向かって進んでいるのだ。
 彼への想いを強くすればするほど涙は迫り上がってくる。私は強く奥歯を噛み締め、ともすれば隙を突いて零れそうになる声を抑えた。大きな声を上げてはいけない。声を上げれば、見張りの衛士が駆けつけて来る。
 それは即ち、この時間の終わりを意味していた。
 目を伏せ声を殺し、ぽたりぽたりと涙を落とす私の頬に温かいものが触れる。そっと瞼を持ち上げると、彼の指が私の涙を拭ってくれているのだと知れた。
 彼が素手で私に触れるのはこれが初めてではないだろうか。
 そう思いながら顔を上げると、そこには少し照れくさそうに笑うグレオニーがいた。少し皮膚の堅い親指が私の目元を拭って遠ざかる。
「そんなに泣かないでください。俺たち、両想いだったんですよね……もっと早く気付けば良かった」
 本当にその通りだ。
 少し己と向き合う余裕があれば済んだ話だったのに。
 瞬きのたびに流れる涙を、飽きることなく幾度も幾度もグレオニーが拭ってくれる。その手がゆっくりと目元から逸れ、髪へと至った。
「こうして貴方に触れるのは初めてですね」
 俯く私の髪を手袋を外した手が優しく撫でる。
 何度も何度も。
 でもこれが最後だ。もう二人きりで会う機会など持てまい。
 目と目が合う。何かに吸い寄せられるように彼の方へ近付くと、同じようにグレオニーも間合いを詰める。彼の手が髪から頬へと流れた。
 そっと目を閉じると暖かな感触が唇に一瞬触れ、僅かな間を置いて離れる。檻が立ちはだかっているせいで抱き締められないのがひどくもどかしく、温もりが離れるのを拒むように私は彼の手を握った。
 嵐が過ぎ去ってしまえば、こんなにも平和なのに、この平和はもうすぐ消える。
 私が消すのだ、この手で。

[ 完 ]

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック