「冠を持つ神の手」の感想やら妄想やら色々ごった煮です。
連休って素晴らしいですねフヒヒ
2015年09月21日 (月) | 編集 |
↓畳んでるSSもどきの説明

!! グレオニー愛情verAED前提 !!

前回の続き。正確には前々々々回からの続き。そしてラスト。
視点:ハイラ
グレオニーの出番、あるよ!!
!!注意!! レハト様、メッチャ喋るヨ★
(訳:喋らせないとどうにもならなかったorz)


漸く終わりです。
ハイラが口から泡吹いてますが、何とか生きてます。
でもリア充に中てられて可愛そうなので、ちょっと娼館にでも放り込んで命の洗濯をさせてやろうと思います。
感謝しろよな!!

というわけで、とりあえずのろのろ約月1更新はこれにて終了です。
次のが書き終わってない(゜-゜)
い、いや、そこそこいいところまでは書いてるんだけど、ついうっかり手が滑ってゲームをしてしまってだな。
げーむってこわい。
シルバーウィークに「1日1枚グレオニーを描く」を掲げたら二日目にして利き手の人差し指を負傷するという悲しい事件が起きて断念することになりました。
これは仕方ない。
あと、近頃テエロさんが直接私の脳に語りかけてきて怖いです。
具体的にどう怖いかって言うとヴァイル好き過ぎて怖い。
助けて、グエロニー!!


なにやら随分昔の記事にまで拍手ありがとうございます。
のろのろがんばります。






5.舞踏会にて

 寵愛者様は舞踏会があまり好きじゃない。あまりと言うか、かなり。
 衣裳係が端正込めて仕上げた、流行最先端のドレスを着てるってのに微笑みひとつ見せず、黙って陛下の隣の椅子に座ってるだけ。若い貴族やらその息子がちらちら投げ掛けてくる視線にも無反応。可哀想に、折角のドレスが泣いてるね。
「ヴァイル、どこ行くの」
「どこって、言うなれば営業?」
「駄目。行かないで。座ってて」
「ええー。ただ座って見てるだけって退屈じゃない? まあ、踊るのもたいして面白くはないけど、ずっと座ってるよりはマシだしさ。中には面白い話とかするやつもいるかもしれないじゃん」
「駄目。絶対駄目。ヴァイルが行くと私も行かないといけないでしょ」
 どういう理屈なの、それは。
 寵愛者様の言ってることの意味は分かるけどね。一国の王が臣下と交流を深めてる場で、寵愛者様だけが上座に座りっぱなしと言うわけにはいかない。
 だからって陛下を引き留めるかね。
「レハトも踊れば良いじゃん」
「やだ。なんで良く知りもしない男と手を繋がないといけないの」
「仕事だから?」
「……ヴァイルの薄情者」
「レハトが婚約するとかしないとか言い出したせいで、こっちの王配立候補者が増えて大変なんだからお互い様」
 そう溜め息混じりに溢してから、陛下は飄々と人波に紛れていった。
 どうするのかと思ったけど、結局寵愛者様も溜め息をひとつ落として重い腰をあげた。
 これは意外。自分の立場をきちんと弁えてるとは思わなかった。てっきり仮面のような笑顔を貼り付けて周囲を威圧し続けるもんだとばっかり思ってたのに。少しは大人になった、ってことなのかね。いやあ、めでたい。こんなめでたいことってあるかね。遠慮せずにもっとさっさと大人になってくれても、こちらは構わないんですよ?
 渋々ながら動き出した寵愛者様は、出来るだけ気配を消そうと消そうと努めていたみたいだけど、そう上手くいくはずがない。寵愛者様の一挙手一投足に注視している人間がいないはずがなく、案の定近くでずっと隙を伺っていた物好きな若い男からすぐに声が掛かった。
 腐っても寵愛者様。さすが。あ、これ、誉めてるからね、一応。
「レハト様、一曲踊って頂けませんか」
「喜んで」
 顔がちっとも喜んでませんが。
 八割方グレちゃん目当てとは言え、子ども時代に訓練場に通い詰めていたせいか、それとも頭が残念な分、アネキウスが慈悲を与えたのか、寵愛者様は驚くほど体力があるし、踊りも上手い。正直、踊りに関してだけは称賛に値するし、見ていて飽きない。
 だからと言って別にずっと鑑賞してるわけでもないけど。
 踊る寵愛者様を眺めてる暇があるなら、もっと有意義なことに使いたいじゃない。例えば目の保養とか。
 と言うわけで、時折気が向いた時に寵愛者様をちら見しつつ、舞踏会の華と呼ばれる女性陣を愛でていると、
「レハト様付の護衛の方ですね。こちらをどうぞ」
 あちらこちらに飲み物を渡して歩いていた侍従に勧められたのは明らかに酒だった。
 飲んでも良いなら遠慮なく頂くけど、今はそうもいかない。笑顔でトレイを差し出す侍従の子もこういう華やかな場に引っ張り出されるだけあって結構可愛いし、自由の身だったらついでに口説いたりするんだけど。そしてあわよくば。
 あーあ、なんで護衛なんて面倒なだけの立場なんだろうね、私は。
「ああ、残念ですが勤務中なので」
「レハト様から、差し上げるように言付かったのですが」
「寵愛者様から?」
 あのグレちゃんのこと以外まるで考えてない子が、そんな気を回すかね。
 でもまあ、ご主人様の許可があるなら有り難く頂こうじゃないの。
 小さなカップを受け取り、舌先で味を確かめる。
 あ、美味しい。さすが国王主催の舞踏会。いやあ、酒飲みながら目の保養とか最高だね。これで気に入ったのをお持ち帰り出来たら言うことなしなんだけど、寵愛者様のお守りの真っ最中だから――なんて良い気持ちで何とはなしに会場を見回し、寵愛者様の姿がないことに端と気付いた。
 どこ行ったの、あの人。
 隅から隅まで丹念に探したところで、いないものはいない。
 さっきまで不承不承ながらひきつった笑顔で誰かと踊ってたはずなのに、ちょっと目を離した隙にこれだから困る。子どもじゃないんだから勝手にいなくなるんじゃないよ。
 大広間にはいないと踏んで、露台を探してみたけどそこにもいない。
 さすがに不味いよね、これは。誰かの口車に乗せられて連れ出されるような人じゃないはずだけど、万が一ってこともある。
 私らを困らせようと、どこかに隠れてんのかね。
 ああもう、何はともあれこういう時はグレちゃんだ。グレちゃんに限る。グレちゃんが、「レハト様、どちらにいらっしゃいますか」って呼べばほいほい出て来る。そういう人なんだよ、あの人。
 夜勤か夜遊びに勤しんでいない限り営舎にいるはずだから、と足早に大広間を後にし、訓練場に差し掛かったところで私は足を止めた。
「お気持ちは嬉しいですけど……ち、違います違います、迷惑だなんてとんでもないです。俺だって…………でもやっぱり駄目です。こういうのは良くないと思……え、あ、そ、そりゃ、俺だって男ですから…………と、とにかく、誰かに見られたら困ったことに……いえ、俺は良いんです。でも……」
 ちょっとちょっとちょっと。この声、グレちゃんでしょ? まさかとは思うけど、あのグレちゃんが寵愛者様じゃない女と逢い引き?
 気になる。ものすごく気になる。ただでさえ気になるのに、相手の声が全然聞こえないから尚更気になる。
 そして私は見なかったことにしてあげる優しさなんて、これっぽっちも持ち合わせてないわけで。
 それにほら、何と言っても私は寵愛者様付の護衛だからね。恋人が浮気してるなら現場をしっかり押さえた上で報告する義務があるじゃない。
 素敵な大義名分の前に寵愛者様探しはとりあえず横に置いておいて、じわじわ声がする方に近付く。植え込みの陰に隠れつつ、距離を詰める。
 まだ聞こえないね、相手の声。
 もう少し近付いても気付かれないだろうと一歩踏み出した瞬間、私の靴の下で小枝がぱきりと折れた。
「誰だ!?」
 あーあ、やっちゃった。もうちょっと、ってとこだったのに。
 グレちゃんの鋭い誰何の声に仕方なく立ち上がり姿を見せる。
「あー、私、私」
「ハ、ハイラ……な、なんっ、なんでっ、なんでここに!!」
「ちょっとね。と言うか、グレちゃん、何、その格好」
 私と対峙する位置に立つグレちゃんは、コートを端をつかんで大きく左右に広げる、と言う、まるで怪しんで下さいと言わんばかりの格好を取っていた。
 これはさ、突かずにいるのは失礼ってものだよね。
「後ろに何か隠してる?」
「かっ、隠してない!! 誰も隠してない!!」
 誰もって、グレちゃん。
 なんて正直者なんだろうね。涙が出そうだよ。面白くて。
 で、誰なのさ。グレちゃんが必死で隠している相手は。別にグレちゃんの弱みなんて掴んだところで使い道なんてまるでないんだけど、知る機会に恵まれたなら逃すわけにはいかないよね。人ってそういうものじゃない? そうでしょ?
 それにしても、やるね、グレちゃん。寵愛者様が舞踏会で確実に身動きが取り難い時を狙って、堂々と王城で逢引とか。しかし、王城内で逢引出来る相手となると、侍従、か。寵愛者様付きの子だと俄然面白さが増すんだけど、さしものグレちゃんもそんな危ない橋は渡らないよね。
「で、グレちゃんは何してんの?」
「そ、そっちこそ」
「私? 私は舞踏会の途中で失踪したご主人様を懸命に捜索中。で?」
「べ、別に特別な理由は……」
「理由もなくこんな時間にここにいるの? なんで?」
「だから、別に理由は……ええと、そ、そうだそうだ、な、なんかちょっと寝付けなくて。そ、それで、夜風に当たろうかな、なんて」
 寝付けなくて、ねえ? それでここまでふらふら来たって?
 そんな見え透いた嘘、私じゃなくてもすぐ気付くし放っておいてくれないよ。どうせ嘘を吐くなら、もっとマシな嘘吐かなきゃ。浮気してること、すぐ寵愛者様にバレちゃうよ。あの人、グレちゃんに関する勘は人一倍なんだから。
 ああ、急いでなきゃもうちょっとグレちゃんで遊んで行くんだけど。そろそろ寵愛者様探しに戻らないと駄目か。何かあったら私の首に関わってくるし。寵愛者様のせいで、私の首と胴体が離れ離れになるなんて冗談じゃない。
 お遊びの時間はここまで、ってことで。
「ま、なんでもいいけど、面倒なことになる前にもど……」
 戻りなね、と優しい忠告の言葉を残しかけたところで風が吹いた。そのせいで背後にいる、恐らく女性のドレスの裾がひらりとかいま見えて――あ、あの色にものすごく見覚えがある。
 これはさ。もしかしなくても、私、目的地に辿り着いてるよね、そういうことだよね。
 あー、そうだったそうだった、グレちゃんが浮気するなんて天地がひっくり返っても有り得ないんだった。そんな簡単なことを忘れてるとか、きっと寵愛者様に気を遣ったり振り回されたりして疲れてるんだね、私。有給休暇でも取って、娼館行ってのんびり静養しないと。
「そこにいらしたんですか、寵愛者様」
「な、何言ってるんだよ、ハイラ。レ、レハト様はここにはいらっしゃらな」
「はいはい、良いからグレちゃんは黙ってて。寵愛者様、途中で職務放棄は如何なものでしょうねえ」
 絶対に聞こえてるのに、寵愛者様はグレちゃんの背後に潜んだまま返事をしない。代わりに、と言ってはなんだけど、グレちゃんが一人で泡を食っている。
 あ、そう。あくまで違うと言うわけね。自分は寵愛者様ではない、と。
 そうしたいならそうすればいい。寵愛者様を引っ張り出す方法がないわけじゃないし。
「おや、私としたことがとんだ勘違いだったみたいで。あー、寵愛者様がグレちゃんと逢ってるわけがなかったね。舞踏会そっちのけでグレちゃんと逢い引きしてた、なんて知られた日には、益々二人の関係への風当たりが強くなるだけだし。はしたないとかふしだらとか、寵愛者様にとって不名誉な評価が広まるかもしれないし。下手したら、グレちゃんが唆した、みたいな話になるかもしれないしねえ」
「…………」
 グレちゃんの顔が徐々に青褪めて行く。
 だよね。ま、グレちゃんが気にしてるのは自分じゃなく寵愛者様の評判だろうけど。少しは自分の心配したらどうなの。この場合、批判の的になるのはどう考えてもグレちゃんでしょ。成人前の洟も引っ掛けられないような寵愛者様ならともかく、誰が好き好んで今の寵愛者様に喧嘩売るのさ。
「今ならまだ誤魔化せると思って焦ってたもんだから、つい、ね。悪く思わないでよ? 寵愛者様がそんな危険を冒すわけないのにねえ。いやあ、グレちゃんが寵愛者様と一緒じゃなくて本当に良かった」
「…………レハト様」
「……私、ここ」
 半ば呆然とグレちゃんが寵愛者様の名前を呼ぶのとほぼ同時に、グレちゃんがひた隠しにしてた背中側から寵愛者様がおずおずと顔を覗かせた。
 分かってたこととは言え、頭が痛い。
 大体、この正直が服着て歩いてるようなグレちゃんが、嘘で私を煙に巻けるわけないじゃないの。誤魔化そうとした心意気でさえ私は買わないよ。
 さて、ではちゃっちゃと寵愛者様を回収していきますかね。我ながら仕事熱心で涙が出るわ。
 そう思いつつ一歩踏み出した私の目の前で、一も二もなく寵愛者様が謝ったのは、予定外の労働を強いられた私ではなくグレちゃんだった。
「ごめんね、グレオニー。そんな大事になる可能性があるなんて、ちっとも思わなくて。どうしてもグレオニーに会いたくて……グレオニーに迷惑掛けるつもりなんてなかったの。本当にごめんなさい」
 ついぞ見たことがない程殊勝な様子の寵愛者様は、くすん、と小さく鼻を啜った。
 なにそれ。迷惑掛けられたのは私なんだけど。グレちゃんはただ寵愛者様とイチャイチャしてただけじゃないの。
 しかし寵愛者様のこの変わり身の早さが計算じゃないから怖い。グレちゃんの前だとなんでこうなるの? 病気?
「いえ、良いんです。俺だってレハト様にお会いしたかったですし、それに、本当は会いに来て下さってすごく嬉しかったです。会いたいと思ってるのは俺だけじゃないんだなって」
「グレオニー……」
「レハト様……」
 しまった、呆れてて止め損ねた。
 よく飽きないね。そばで聞いてるこっちは飽き飽きしてるのに。
「はい、そこまで。とっとと戻りますよ、寵愛者様。グレちゃんも誰かに見咎められないうちに戻りな」
 面倒臭くなって寵愛者様の腕を引っ付かんで強制的に二人を引き離した。そうでもしないと永遠に二人だけの世界で見つめあったまま、グレオニー、レハト様、を繰り返しかねない。
 すぐ世界から自分たち二人以外を消す癖、どうにかしてくれないかね。
「ちょっとハイラ!! 痛い!!」
「ハイラ!! レハト様はか弱い女性なんだから、もっと丁重に」
「あーはいはいはいはいわかったわかった。ハイラさんが華麗にエスコートして舞踏会に放り込んで来るから、グレちゃんは帰って寝なさい。ほら、行きますよ、寵愛者様」
「グレオニー、またね」
「はい、お気を付けて」
 気を付けなくたって、寵愛者様なら、グレちゃんの目が届かないところだったら、暴漢の一人や二人――いや、十人くらい、あっという間に片付けるでしょうよ。女にしちゃ、そこそこ強いんだから、この人。
「護衛を撒いて舞踏会抜け出すとか、全く、何考えてるんだか」
「グレオニーのこと」
「……知ってますよ」
 嫌って言うほど知ってるから、満面の笑みでげんなりするようなこと言うのはやめて欲しい。まあ、寵愛者様の機嫌が宜しいのは良いことだけど。
 月明かりのグレオニーも素敵だったとか何とか、私相手に長々と惚気話を披露して下さる寵愛者様を大広間に投げ込む頃には、私の精神的疲労は頂点に達していた。
 ねえ、信じられる? こんな生活が明日も明後日もそのまた次の日も続くんだよ?
 この苦行から脱するためにも、二人が一瞬一秒でも早く結婚するよう、全身全霊で援護するべきなのかねえ……。

[ 完 ]