「冠を持つ神の手」の感想やら妄想やら色々ごった煮です。
急にタナッセが来たので
2014年03月28日 (金) | 編集 |
↓畳んでるSSもどきの説明

!! タナッセ愛情ルート前提 !!

レハト様:未分化、一人称「僕」
タナッセとは婚約中
内容:相変わらずタナッセの扱いが色々ひどい(゜-゜)


漁ってたら発掘した。
白状するなら

「来いよ、タナッセ……」

みたいなことがしたかっただけです。
本当にもうただそれだけ。
それ以上でも以下でもない。
でも王子党から私の額の選定印を剥がそうとする納豆的な輩が不法侵入してくると怖いのでちょっと鎖国しておきますね。
入国には「10グレオニー」が必要です。

さ あ 、 払 え 。

つ べ こ べ 言 わ ず に 払 え 。

そして「何気に王子SSとか、初じゃね?」とか思ったらそんなことはちっとも全く全然なかったです。
以前にも果てしなく扱いの酷いSSをUPしていました。
王子の扱いの酷さに定評のあるブログはここだけ★


拍手ありがとうございます。
グレオニー欠乏症が伝染したようなので薬を下さい。
出来れば特効薬で。





 、 空 い て ま す よ 。

 夜のしんと冷えた空気の中で僕は予定通り目を開けた。
 耳を澄ませても聞こえてくるのは鳥の微かな鳴き声だけで、隣の侍従控え室からは物音一つしない。多分眠っているのだと思う。
 僕は衣擦れの音にすら細心の注意を払い、素足をそっと床に付けた。ひやりとした温度が足裏から染みるが、靴は履けない。履いたまま歩けばその音が響くのは火を見るより明らかだ。代わりに靴下を履くことで冷たさを和らげると同時に、ひたひたという素足独特の足音をも隠す。
 息を潜め、枕をそっと小脇に抱えた。
 念のため寝台の脇に転がっていた靴も持つ。
 侍従部屋の扉へぴたりと耳を付け、物音がしないのを確認してから部屋を抜け出した。
 昼間より幾分灯りを抑えているが、安全面から王城では夜間でも灯りを絶やさないおかげで廊下は難なく移動出来る程度には明るい。
 夜警中の衛士がいないかどうか辺りを見回す。どうやらこの近辺を見回っている衛士はいないらしい。
 しめしめ。
 今が好機と僕は一目散に目的地に向かって走り出した。時折、見回りの衛士の影を見付け、咄嗟に暗がりに身を隠しながらもじわりじわりとそこへ近付く。そうしたいくつかの苦難を乗り越え、僕は顔を覗かせればその場所がはっきり見える曲がり角で足を止めた。
 そろっと顔を出して様子を窺う。
 やはり今日もいる。
 いないわけがないのだが、一体モルはいつ休息を取っているのか。そのうち過労死しそうだ。
 何はともあれ、扉の隙間から僅かに漏れる灯りで部屋の主がまだ起きている確証が得られた以上、今更引き返せない。だがモルをどうにかしない限り目的が達せないのは明らかだ。
 無策なまま来てしまったことを悔やみつつ、隙を窺っていると不意にこちらを向いたモルと目が合った。
 咄嗟に首を引っ込めたが感付かれただろうか? こちらもかなり機敏な反応をしただったから大丈夫だと思いたいが。
 モルが気付いていないことを願いつつ、充分に時を置いてから再びそっと顔を覗かせてみた。
 ――こっち見てる、すごく見てる。
 これはもう誤魔化しようがなさそうだ。それならそれで隠れているのも馬鹿馬鹿しい。
 僕は角からひょいと躍り出、モルへと近付いた。
 長身のモルを見上げるのは首が疲れるが、目を逸らしたら負けだ。そのままの体勢で、タナッセに会いに来た、婚約者なのだから問題ないだろう、と胸を張って告げると、抱えた枕も靴を履いていない足も人を訪ねるに相応しい時間かどうかも、何も聞かずにモルが僅かに身を引く。
 どうやら通っても良いということらしい。
 些細なことに拘らない話の分かる男だ。モルの好意を素直に受ける形で、僕は予定通りタナッセの部屋への侵入に成功した。
 相変わらず本ばかりの部屋だ。
 半ば呆れながら見回していると、何かが落ちる音がした。音の方へ首を巡らすと、こちらをぎょっとした顔で見ているタナッセの足下に本が数冊落ちている。
「な、な、お、おま」
 断続的な音の羅列だが言いたいことは大体理解出来る。なぜ僕がここにいるのか問いたいのだろう。
 嘘を吐く必要はない。
 泊まりに来た、と枕を叩いて見せるとタナッセは握った拳を額に押し当てた。
「待て。どういうことだ。分かるように説明しろ。私はお前を呼んだ覚えはないし、そんな約束をした覚えもない」
 それはそうだ。僕にもそんな覚えはない。
 たまたまタナッセの部屋の前を通り掛かったら灯りが点いていたので立ち寄った、と言うと、ひくりとタナッセの眉が上がった。
「こんな夜更けに何をどうしたら通り掛かるのだ!」
 声を荒げたタナッセを慌てて制す。
 誰か様子を見に来たらどうするつもりだ。この状況で言い逃れは難しい。タナッセが未分化の寵愛者を自室に連れ込んでいやらしいことをしようとしていた、なんて噂が流れるのは僕としても非常に遺憾だ。
 さしものタナッセも大事になるのは避けたいのか、一瞬押し黙って声を潜めた。ゆっくりこちらに近付き、諭すように僕の肩に手を置く。
「理解したくはないが、話は分かった。だがな、それは出来ない相談だ。モルに送らせるから、侍従に知られる前に部屋に戻れ」
 だが断る。
 僕は大きく腕を振りかぶり、手にしていた枕を全力で放った。
 枕は綺麗な弧を描き、小さな音と共に寝台に無事到着する。
 よし。
「おい、一体何のつも……」
 うっかり手が滑って枕があんなところに行ってしまった心配しなくてもタナッセの手を煩わせるつもりはない責任持って自分で取りに行くから気にしないで欲しい。
 息を継ぐ間も惜しんで捲し立て、眉間に皺を寄せたタナッセの脇を駆け抜け寝台に飛び込む。ついでにもそもそと毛布に潜り込み、簡単に引き剥がされないよう寝台を強く掴んだ。
「レハト!」
 咎める声には耳を貸さない。交渉の余地がないという意思表示だ。
 寝台に齧り付き続けていたが、タナッセがモルを使って実力行使に及ぶことはなかった。試しに力を抜いてみても隙を突く様子もない。
 ――勝った。
 にんまりと笑い、僕はにじにじと寝台の半分を空け、そこを数回叩いた。意図を汲んだタナッセは近付いてくるどころか慌てた様子で壁際まで後退する。
 取って喰おうと言うんじゃあるまいし、こんな純情可憐な子どもを捕まえて失礼な。
 僕は尚も寝台をバンバン叩き続けた。
「お、おまえは一体何を! い、いい、いいから私には構うな。私は……長椅子で寝る。そこは特別におまえに貸してやろう」
 広い寝台は寂しくて眠れない。
「寝台の大きさにそう変わりはないだろう!」
 バレたか。強情な男だ。
 それならせめて寝付くまで何か話をして欲しい。
「は、話か。まあ話くらいなら、な」
 タナッセは一人で何度も繰り返し頷きつつ、こちらへやって来る。
 寝台の脇に椅子をひとつ置き、腰を下ろそうとしながらも何を話そうか考えている素振りのタナッセの隙を狙い、僕は思いきり彼の肩布を引いた。
 不意をつけば子どもの力でもなんとかなるもので、まんまとタナッセが寝台と倒れ込む。
「レ、レハト! どういうつもりだ!!」
 タナッセがぐだぐだと下らないことを気にしているのが悪い。最初から大人しく僕のお願いを聞き入れてくれていたらこんな真似はせずに済んだのだ。だからタナッセが悪い。
「……おまえという奴は」
 先が思い遣られるとばかりに溜め息を溢したタナッセは、意外なことにそのままそこへ横になった。
「夜が明ける前に部屋へ戻すからな。いいな、夜が明けるまでだぞ」
 言いながら乱暴に僕の頭まですっぽりと夜具で覆う。
 粘り勝ち、ということだろうか。
 もぞもぞと顔を出すと、強引に枕に頭を沈められた。
 随分な扱いだが、まあいいだろう。目的は達せられたのだから。

[ 完 ]