「冠を持つ神の手」の感想やら妄想やら色々ごった煮です。
長い道のりだった……
2013年10月24日 (木) | 編集 |
↓畳んでるSSもどきの説明

!! 前提なし(強いて言うなら、グレオニー友情verBED) !!
レハト様:女性/一人称[私]/not王/衛士
視点:フェルツ
唐突にカビヒゲが来たので。


ついにこの時が。

自分でも思わず大文字にしてしまう瞬間が漸く訪れました。
ここまでで5話費やすとかどうなってんの!?
鈍感とかいうレベルを遥かに超越してるんだけど!?
ここに辿り着くまでに幾多のレハト様が犠牲になったことか。
フェルツが歩いた後にはペンペンレハト様も生えない。


早いもので衛士祭作品提出〆切まであと3日。
衛士祭だって言ってるのに、執拗にグレオニーに固執した参加者が私です。
一応これでもグレオニー党員なのでな。
これで、うっかり手が滑って何回も殺したことはなかったことに。ヘッヘッヘ
そう言えば、モルも衛士なんですよね。
王子とワンセットなイメージのせいで、どうも衛士という事実を失念しがちです。
言うなれば、王子の第2のオシャレ布的な存在というかそんな感じ。
鉄壁のオシャレ布。
鋼鉄のオシャレ布。
最強のオシャレ布。


拍手ありがとうございます。
お返事は衛士祭開始後になると思いますすみませんorz





 音 ・・・ 4

 新しい焼き菓子を求め、寵愛者様は弾むような足取りで隣を歩いている。寵愛者様の機嫌が良いのは良い事だ。
 馴染みの店で早速いくつか購入し、おまけまで付けて貰った寵愛者様は行きよりも更に上機嫌で腕に菓子を抱えていた。
「あれー、レハトってば今日はいつものお兄さんと一緒じゃないの?」
 目的を達し訓練場に戻ろうとする寵愛者様に、親しげに声を掛けてきた男は見るからに胡散臭かった。
 あー、なんか前にグレオニーに聞いたような気がする。市に寵愛者様と親しい商人が時々店を出してるって。但し、風貌は限りなく怪しい、とも言ってたな。それがこの人か。
 過保護なグレオニーのことだから大袈裟に言ってるのかと話半分くらいに聞いてたけど、これは見るからに怪しい。外見から年齢が推測出来ない。そもそも本当に商人なのか? 芸人とか言われた方がよっぽどしっくりくるような。まあ、世の中には色んな人がいるから一概には言えないし、外見から判断しちゃいけないんだが。
 足を止めた寵愛者様は暢気に、グレオニーは置いて来た、と言って商人と笑い合っている。
 いいんだろうか、放っておいて。
 でも寵愛者様が良いと言うなら俺に口を挟む権利なんてない。
「おや、珍しいね、レハトが装飾品に興味持つなんて。でもそれ結構お勧め。綺麗でしょ? レハトなら安くしとくよ?」
 商人の声に慌てて視線を落とす。
 商人を注視してる場合じゃない。俺が今注意すべきは寵愛者様とその身辺だ。何かあったらどうするつもりだったのかと内心冷や汗を流しながら見ていると、寵愛者様は耳飾りをひとつずつ手に取り、見比べていた。
 本当だ。装飾品に興味を持つなんて、俺が知り得る限り今まで無かったのに。
 誰か気になる相手でも出来た、とか?
「俺としてはそっちの緑の石のが一押しね。見ての通り装飾が細かくて品が良い割にお値段控え目。でもまあ、普段使いには向いてないかな」
 商人が勧めた耳飾りは、彼の言った通り日常的に身に付けるには少し大振り過ぎる。それに、寵愛者様には少し派手過ぎる気もした。
 寵愛者様は商人の勧めた耳飾りを手にしたが、首を傾げて元に戻し、今度は極小さな石の付いた耳飾りを二つ手に取った。品が良いのか、大きさの割りにどちらも陽光にきらきらと煌めく。
「あー、普段使いするならそれくらいが丁度良いだろうねえ」
 寵愛者様の右手の耳飾りには透明な石が、左手のには赤い石が填め込まれている。
 それくらいなら訓練の邪魔にもならないし、程よい大きさだと俺も思う。まあ、誰かさんは目敏く見付けて何か言うかもしれないけどな。でも散々言ってる通り、あれはまともに取り合わなくて言い部類の、言わば言い掛かりだし。
 寵愛者様は左右を矯めつ眇めつ見ていたかと思うと、唐突に、フェルツはどっちが良いと思う?、とこちらを見上げた。
 俺が驚いたのは言うまでもない。
「俺、が決めるんですか?」
 暗に寵愛者様の好きな方をどうぞ、と仄めかしたつもりが、あっさり、うん、と返されて余計に困る。
 俺が決めていいのか、こういうの。
 決断することに迷いに迷った挙げ句、俺は寵愛者様の右手の透明な石の方を指差した。
 特に理由も聞かず、じゃあこれにする、と寵愛者様は商人にコインを渡している。
 良かったのか、今ので。
 実のところ、決断を迫られて困惑はしたが、寵愛者様なら赤よりも透明な方だとは思ってたから選ぶこと自体には困らなかった。
 人の波を離れると、寵愛者様は徐に耳飾りを付け――ようとしている。成功する気配がないけど。
「付けましょうか?」
 可哀想なくらいてこずっている姿に思わずそう声を掛けると、お願いします、と耳飾りを渡された。
 こんな小さいもの、鏡石もなしに自力でつけるのは至難の業だろう。
 それにしても近付いた寵愛者様から、なんか甘い匂いがする。
「寵愛者様、お菓子でも召し上がられましたか?」
 真っ先に思い付いた可能性を口にすると、寵愛者様は一瞬首を振りかけてから、食べてないよ、と頭を動かさずに仰った。どうやら、耳飾りを付ける俺を気遣ってくれたらしい。
 それにしても、今日は訓練場では食べてないし、そんなに長時間甘い匂いがするのはおかしいよな。寵愛者様の場合、服に匂いが染み付いててもおかしくはないけど、俺たちと違って侍従の子が毎日綺麗にしてるだろうから、それも考え難いか。
 ああ、今持ってる焼き菓子の匂いか、もしかして。
「甘い匂いがしたので、そうではないかと思っただけです。余計なことでした。忘れて下さい」
 菓子の甘さとはちょっと違うんだけど、どこかで嗅いだ気がする。
 割と最近だったような。
 ああ、気にしないでくれって言った側から俺が気にしてどうするんだ。でも一度引っかかると気になるもんだよな。思い出せさえすればすっきりするんだけど。
 耳飾りを手に暫時考え込んでいると、寵愛者様が、香油かも、と呟いた。
 言われて思い出す。この匂い、寵愛者様の部屋で嗅いだ匂いか。
「ああ、香油……」
 香油なんて今まで付けてたか?、と思ったけど、ここまで寵愛者様に近付いたのは初めてだ。気付かなくて当然か。
 触れた耳朶は鼻先を擽る香油のようにふわりと柔らかい。俺たちと同じように日を浴びているはずなのに肌が白い。
 頭のどこかがそう感じると同時に不意に指先がぶれ、思わず手を引いた。
「……あ、すみません」
 怪訝な眼差しを縁取る睫毛が長い。
 薄く色づいた唇は男と違って少し厚みがある。
 ちょっと待て、何、冷静に観察してるんだ。耳飾りを付けるんだろ、耳飾り。今の俺の仕事はこの耳飾りを寵愛者様の耳に付けること。ただそれだけだ。さっさと自分に与えられた役目を果たせ。
 改めて触れた耳に今度こそ耳飾りを付ける。
 それだけで終わりのはずなのに、無意識のうちにまるい頬に触れようとしてた指先に、寸前で理性が待ったを掛けた。
「もう、いいですよ」
 ありがとう、と笑った顔に自分でも驚くほど動揺する。
 たかだお礼、されどお礼。寵愛者様のことだ、特別な意味なんてない。ただお礼を言っただけだ。
 寵愛者様の耳で耳飾りがきらりと光った。
 ああ、そうか。何か今、すとんと落ちたと言うか、納得した。
 満足そうな顔で焼き菓子をひとつ取り出し、豪快に頬張ろうとした寵愛者様の腕を掴む。
「すみません、ひとつ言わせて下さい。俺、貴方のことが好きです」
 寵愛者様の目が驚きに見開かれ、その手から焼き菓子がぽとりと落ちた。