「冠を持つ神の手」の感想やら妄想やら色々ごった煮です。
わたしはわるくない
2011年09月24日 (土) | 編集 |
↓畳んでるSSもどきの説明

!! タナッセ愛情verB前提 !!

レハト様:女性/一人称[私]/not王
タナッセとは婚約中(=結婚前)
友情出演:モゼーラ・ゼネ=トカーキ(22)
内容:いろいろひどい(゜-゜)


望まれたものはこういうものではない。
そのことは百も承知している。
だがしかしこうなってしまった以上、誰にもどうにも出来ないのだ。
というわけで、

タナッセ党員は見ちゃだめだゾ☆
モルとの約束だ!!
(いや、見てもいいけどさー)
(閲覧後の苦情とか受け付けらんないわけよ)
(それでもいいって言うなら、自己責任ってことでね)
(そんでもって、なーんか王子の口調が違うよねーねー)

トッズの目が動き始めましたね。
動き始めたら憎悪ルートじゃなくなった気がします。
なんか普通に、レハトの晴れ姿が見たくて忍び込んじゃった、みたいな。
……おい、衛士は仕事をしろ!! どうなってんだ、城の警備は!!

拍手ありがとうございます。
お返事はまた今度。





 由 は ひ と つ

 篭りを終え大人になったというのに、実に遺憾ながら私はほとんど子ども時分と変わらぬ容姿だった。
 それはとりも直さず、高いところに容易に手が届かないということであり、結果私は今本棚を前に思案に暮れている。
 目的の本は本棚の一番上だ。
 限界まで背伸びをし、精一杯腕を伸ばすが、届くどころか掠りもしない。こういう場合に取るべき道は自ずと絞られて来る。
 私は強く頷き、素早く周囲を見回した。図書室の中でも奥まった場所のせいか、他の利用者はおろか、図書室付きの文官もいない。
 よし、これならやれる。
 膝の高さの辺りの本を数冊抜き取り、出来た隙間に足を突っ込む。体勢を崩さぬよう細心の注意を払いながら、もう片方の足も良さげな高さの隙間に捻じ込んだ。これなら如何に小柄な私でも自力で本が取れる。
 勝利にほくそ笑みながら目当ての本の背に指をかけた刹那、聞き慣れた声がそれを手にするのを遮った。
「……何をしている、レハト」
 そう問い掛けるタナッセの頬が微かに引き攣っている。
 仮にも自分の婚約者に対してこんなことを思うのはどうかと思うが、一番口煩いのに見つかってしまった。彼の辞書には見て見ぬ振りという言葉はないらしい。仕方ないので、正直に本を取っているところだと告げるとタナッセはあからさまな溜め息を落とした。
「モル」
 タナッセの側に控えていた――実際のところ、控えているどころかどう見てもタナッセより遥かに目立っている――熊のような衞士がひょいと私を持ち上げて床に下ろした。
 どうやらこれからタナッセのお小言を頂戴せねばならないらしい。
 別に本を踏んだり落としたりしたわけでもないのに。
 それどころか、きちんと脇に避けておいたのに。
 私が明らかにぶうたれたせいか、タナッセが再び溜め息を溢す。
「なぜ本を取るのに本棚によじ登る必要があるのだ」
 それは背が小さくて手が届かないから。
「届かないのなら、誰か呼べばいいだろう」
 近くに誰もいなかったから。
「探すという選択肢はないのか」
 探すよりああして自分で何とかした方がずっと早いし。
「どうしておまえはいつもそうなのだ。女らしくしろとは言わないから、せめてもう少し上品にだな」
 私の中では女らしくも上品にも同義語だ。それにそんなに女らしさや上品さに拘るなら私に結婚など申し込まなければいいのに。自分で選んでおいて文句を言うのはやめて欲しい。
 淀みなく小言を吐き出し続けるタナッセの口許を見ているうちに、釈然としない思いが膨れ上がる。
 タナッセが息を接ぐ一瞬の隙を突いて口を挟んだ。
 だったら女らしくて上品なユリリエと結婚すればいい。幼馴染みだから気心も知れているだろう。タナッセが言い出しにくいのなら私からユリリエに伝えても良い。いや、善は急げと言うし、今から行ってくる。必ず良い返事を持ち帰るからタナッセは安心して部屋で待っていれば良い。
 一方的に捲し立て、さっさと一歩を踏み出すと、それまで珍しく間の抜けた表情を晒していたタナッセが慌てた様子で私の襟首を掴んだ。
 タナッセの小言や嫌味には大分慣れたが、さすがに愛する婚約者に対する態度とは思えず、些かムッとする。
「ま、待て、どこへ行くつもりだ」
 人の話を聞いていなかったのか。話の流れ的にユリリエのところ以外に有り得ないだろう。
「意味が解らない。なぜそこでユリリエが出て来るのだ」
 私の知り得る限りにおいて最も女性らしく、且つ上品なのがユリリエだからだ。それ以外に何がある。おまけに涙を堪えてタナッセの幸せのために私が一肌脱いでやろうとしているのに、話の分からない男だ。
「待て。一体今の話をどう理解すればそんな結論に辿り着くのだ。私は今までユリリエに対してそういった感情を抱いたことはない」
 じゃあ誰になら抱いたことがあるのか。
 間髪入れずに突っ込むとタナッセが低く唸って黙り込んだ。なるほど、どこの令息か私にはとんと思い浮かばないが、タナッセは初恋の君が今でも忘れらないのだろう。つまるところやはりタナッセは私のことなど小指の先程も好きではない、と。結局は罪悪感で私の手を取ったに過ぎないのだ。
 腹立たしい。
 頬を膨らませるとタナッセが少しだけ眉間に皺を寄せた。
「また何か埒もない想像をしているのだろう」
 別に。
 素っ気なく返すとまた溜め息を吐かれた。
「とにかくユリリエを説得する必要はない。第一、虫を平気な顔で掴むやつのどこが女性らしく上品なのだ。あれほど恐ろしい人間は他にないぞ」
 吐き捨てるような口調のタナッセには悪いが、私は成人後の完璧なユリリエしか知らない。
 だからタナッセが嘘で私を誤魔化そうとしていたとしても分からないのだ。
「お二人とも、もう少しお静かに願えますか」
 唐突に音もなく現れたモゼーラに釘を刺され、私とタナッセは顔を見合わせた。
 私たちにそのつもりはなかったが、いつの間にか声が大きくなっていたらしい。だが気まずそうに口を噤んだタナッセをよそに、私の脳裏には全く別のことが浮かんでいた。
 そうだ、モゼーラがいるではないか。女性らしく、本にも詳しい。タナッセと趣味が合うのはまず間違いない。
 私はタナッセの肩布を掴むと、今思い付いたことをそのまま口にした。
「……おまえはまた、下らんことを」
「大変失礼ですが、私にも選ぶ権利がありますので」
 タナッセは頭が痛いと言わんばかりにわざとらしくこめかみを指で押さえ、モゼーラは形容し難い微妙な表情を浮かべる。
 だが今はそんなことは横においておく。
 私は反射的にモゼーラの腕を掴んだ。真正面からその顔を見詰める。
「あの、レハト様?」
 モゼーラが戸惑いの滲んだ声で名を呼ぶが気に掛けている場合ではない。
 正気か、モゼーラ。まあ確かに小兎鹿のように怯える初対面の可憐な子どもに向かって平然と可哀想にとか言ったり、田舎の出で無教養なのを鼻で笑ったり、泳ぎを教えるという名目の元に平気な顔で人を地下湖に突き落としたり、ことあるごとに何かと絡んでは嫌味をぶつけたり、自業自得とは言え王城での評判は史上最低最悪だったり、性格には大いに難有りな上にへたれだが、案外上背もあるし、熊みたいな衞士を連れてるからただえさえ貧相な体格が輪を掛けて貧弱に見えるが私一人を持ち上げるぐらいの必要最低限の体力はあるし、何と言っても幸い見ての通り顔立ちはリリアノに似て端正で、その点だけは王城で右に出るものはいないタナッセに対して全く少しも心動かされないなんて、モゼーラは目の病気なのではないか。
「レハト様がどうしてそのような方と結婚なさる気になったのか理解しかねます。顔ですか?」
 違う。もし顔で決めたのなら、端からあんなに対立しなかった。
「では、一体なぜですか」
 モゼーラが一瞬、まるで軽蔑するような眼差しをタナッセに向けた。とうのタナッセの顔は感情という感情が抜け落ちたような能面でなんだか恐ろしい。
 全部本当のことなのに。私は何一つ嘘は吐いてない――はずだ。
 それはさておき、タナッセのどこが好きか、だが。少し考えて私はこう言った。
 不器用なところだ、と。
 モゼーラが怪訝そうに眉根を寄せる。
「不器用、ですか……私には良く分かりませんが、そうですか、不器用なところが」
 モゼーラは何度か噛み締めるように繰り返しては頷き、やがて、仕事があるからと私たちから離れていった。
 後に残されるのは当然ながら私とタナッセ。それにタナッセの護衛のモルの三人。三人だけだ。
 そのタナッセの視線が痛くて振り向けない。この空気は多分、いや十中八九、いやいや完全に叱られる。
 身構えながらその瞬間を待つ私の耳に一際大きな溜め息が飛び込む。
 来る、間違いなく来る。
 しかしタナッセは想定外の言葉を口にした。
「それで、どの本を取りたいのだ」
 タナッセが怒らないなんて珍しいことがあるものだ。
 私はわざわざ自ら藪に潜む蛇をつつくような物好きではない。タナッセにそのつもりがないのなら、そっとして置くに限る。
 これ幸いと本を指差すとモルの手が付近の本で彷徨い、新妻の心得、と書かれた背表紙に行き着いたのを見て私は首を横に振った。
 違う。それではない。もう少し右の、そう、その本だ。
 モルの指が目的の本に指を掛けたまま動きを止める。それとほぼ同時にタナッセの苦い声が静かに響いた。
「待て。なぜその本を読む必要がある」
 ただの好奇心だ。
 タナッセにきっぱりと告げた上でモルの袖を引き、早く取るよう急かすが、モルは主の指示を待っているのか私の懇願に応じる気配はまるでない。
「モル」
 タナッセが名を呼ぶや否や、モルが息吐く間もなく私を抱えあげた。
 話が違う。本を取ってくれるんじゃなかったのか。詐欺だ、詐欺。
「毒薬の扱い方など学ぶ必要がない。行くぞ」
 担がれたまま身を捩りながら非難するが、取り付く島もない。
 タナッセのケチ、嘘吐き、ヘタレ、マザコン。
 思い付くまま悪口を並べ抵抗したものの、結局そのまま強制的に図書室から連れ出されたのだった。

[ 完 ]

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