「冠を持つ神の手」の感想やら妄想やら色々ごった煮です。
乗り遅れた感のある憎悪
2010年09月13日 (月) | 編集 |
↓畳んでるSSもどきの説明

!! ヴァイル憎悪verB前提 !!

ヴァイル:王位継承、性別男
レハト:性別女、一人称・私
友情出演・テエロ


憎悪党の真髄を見るがいい(キリッ

(そろそろ、「憎悪党じゃないよ!」って言っても誰も信じてくれない予感)
(でも憎悪党じゃないよ!)
(ホントだよ!!)

ヴァイル憎悪に誰も絡ませないとこうなった。
なぜかレハト様が病んだ。
病んだけど、幸せそうだから、まあいいか、みたいな。
こういう時にテエロがとってもお役立ちだと思うのです。
友情出演とか言っといてひどい役回りだが、ヴァイルと絡めたんだから満足だろう? なあ?
や、やめろ、なんだその針は……あ、あ……アッーーーー!!!!

ヴァイル憎悪シリーズ、一応トッズ編があるんだけど、無駄に長くなって収拾が付かないので捨てたい。
捨てたい。
捨てた(゜-゜)<トッズ党へ不法投棄

そういや、ティントア裏切verCとヴァイル愛情ルートが絡むと、神殿vs王城でとっても美味しいことになる気がするのです。





 ん だ 箱 庭

 私は城にいながら城の住人とは言い難い。強いて言うなれば、王の持ち物だろうか。城の奥深く、高い塔の一室に押し込まれた私は時の流れの中にうずもれ、近い将来人々の記憶から消え行く存在だ。
 ヴァイル以外は。
 窓の外は、ヴァイルが訪ねて来ることがあれば、散歩がしたいと駄々を捏ねてみようかと思う程に鮮やかに澄んだ青が一面に広がっていた。小鳥の鳴き声がする。誘われるまま窓に近付こうとした私を引き留めるように扉が軋んだ。
 音もなく入り込んで来た男が手近な机に鞄を置いた。髪を後ろに撫で付け、感情一つ示さない目をした男はヴァイル付きの医師だ。名前はテエロと言っただろうか。生憎と然程興味の沸く相手ではないため記憶が薄い。本来の仕事のほかに、ヴァイルの命で定期的に私の健康状態を確認しに来ることも仕事の一部にされたらしい。
 ご苦労なことだ。
 私はいつものように椅子に腰を下ろした。
「失礼、腕を」
 健康状態の確認と言えどそれは名ばかりで、本来は私に何か異変がないかを見極めている。
 例えばヴァイルは私の自死を危惧しているようだがそれは杞憂だ。ここにはそのための道具も無ければ、そもそも私自身にそのつもりがないのだから。
 テエロは一通り形式的な検査を終えると、自らカップにお茶を注いだ。ポットからカップへと、温かな湯気と豊かな香りを伴う液体が注がれる。
 今までこんなことは一度たりともなかった。
 何を企んでいるのか。
 とりあえずは彼の好きなようにさせておくのが良い。
 私は眉一つ動かさずにその手付きを見守り続けた。私の視線にはとうに気付いているだろうに、テエロにも動じた様子はなく、傍らに置いてあった鞄を引き寄せる。
 彼は手段も目的も隠そうとはしなかった。
 私の前に置かれたカップの上で、鞄から取り出した小さな包みを開いて傾ける。白い粉が静かにカップに吸い込まれ、そしてすぐに溶けて消えた。
「どうぞ」
 まるで本当にただのお茶を勧めるような仕草で私の方にカップを押しやる。粉の正体など聞くだけ野暮というものだ。
 脇に添えられた匙で中身をかき回すと、底に残っていた粉も全て液体と同化した。だがそこまでだ。口にはしない。匙に掬っては零す動作を二度、三度と繰り返す。
 充分な間を置いてテエロが口火を切った。
「貴方の存在はヴァイル様にとって毒にしかなりません」
 なるほど。毒をもって毒を制すというわけか。
 実に彼らしい発想だ。
 私が僅かに口角を持ち上げ笑みを刻んでも、テエロは眉一つ動かさなかった。
 ならば私も問おう。貴方は彼の救いとなれるのかと。
「……そんな分不相応なことは考えたことがありません。ただあの方のためにならないものを取り除くだけです」
 テエロの声に僅かながら感情が乗る。
 尤も彼が内に秘めたる想いにはとうの昔に感付いていた。肝心のヴァイル本人には微塵も伝わっていないことが私には哀れにさえ思える。
 私は新たな問いを口に乗せた。
 同じ論理で衛士を一人殺したのか。
 テエロが目を眇め、何か言おうとするのを遮る。
 否、それは違うはずだ。膨れ上がった私的感情に押し流され、諾々と体内で蠢く衝動に従っただけだろう。その責任を全てヴァイルに押し付けて。
「貴方に私の何が解ると?」
 解らない。私は貴方ではないのだから解るはずもない。
 ただテエロが私を憎む気持ちは完全とは言い難いが、多少なりとも理解出来る。
 愛情にせよ憎しみにせよ、今ヴァイルの心を占めるのは私一人だ。今日までテエロが密やかに想いを寄せていた相手を、私は目の前でいとも容易く奪い去って見せた。そうして今ヴァイルの身体はまごうことなく男性のものになっている。それも全て私が女性を選んだがためだ。私が男を選んでいたら、彼は女を選んだだろう。
 それほどにヴァイルは私に執着している。
 互いに感情を乗せない視線を交わす。腹を探っているわけではない。ただ、双方とも相手を見ているようで見ていないだけだ。
 そうしていると、扉の向こう側がやにわに騒がしくなる。理由など一つしかない。
 まもなく開かれた扉から姿を現したのはやはりヴァイルだった。向かい合い沈黙を供に時を過ごす私たちの間に、子ども時代とあまり変わりない口調が滑り込む。テエロが息を呑む音が聞こえた気がした。
 ヴァイルの登場は彼にとって予想外だったらしい。
「陛下……」
「見つめあって何やってるわけ?」
 明確に不機嫌さを露呈するヴァイルを四つの眼が見上げる。それを受け止めつつ、ヴァイルは机の上のカップに視線を落とした。
「レハト、どっか悪いの?」
「……いえ、ご健勝でいらっしゃいます」
 誰であれ、用もないのに私の元に長居することをヴァイルは良しとしなかった。それが男とあらば尚更だ。医師であることはなんの免罪符にもなりはしない。
 室内の人数にそぐわないカップから、一瞬だけテエロに目を向けたかと思うと、ヴァイルは口端に僅かな笑みを称えてそれに手を伸ばす。
「飲まないんだったら俺が」
 ヴァイルの指先が触れる前にカップは消えた。中身を捨てる音が響く。
 変わらぬ笑みを刻んだまま、ちらりと視線だけを動かしヴァイルが問う。
「何すんの?」
「もう冷えています。新しく淹れ直された方がよろしいかと」
「へー」
 納得したわけではないようだが、詳細を問い質すつもりもないらしい。今日のところは見逃す、といったところか。
 面白半分にテエロを見れば、額にじわりと汗が滲んでいる。思わず笑みの浮かんだ口元を私は掌でそっと隠した。笑い声を噛み殺すのが苦しい。
 テエロにしてみれば大失態だろう。私を殺し損ねたどころか、ヴァイルの心証まで悪くしてしまった。気の毒なことだ。
「レハト様の診察は既に終わっておりますので、私はこれで失礼させて頂きます」
「ちょっと待った」
 いつも通りの一礼に彼らしくない早口を添えて部屋を出て行こうとするテエロを、ヴァイルが一言で引き留める。
 背を向けていたテエロが体ごとヴァイルに向き直ったが、呼び止めておきながらヴァイルは後ろを振り返らない。私の顎にヴァイルが静かに指を添える。目線を私に繋ぎ止め、そのままの姿勢で口を開いた。
「人の物、勝手に処分しようとしないでよ」
 ぎりりと歯の軋む音が聞こえた。それは私よりいくらかテエロに近い位置に立つヴァイルにはそれ以上にはっきり聞こえたはずだ。
 視界の端でテエロの手がきつく握り締められたのに目を留め、私は目を細める。
 これでテエロにも良く解ったはずだ。如何に他者が私を排除しようとしてもヴァイルは私を手放さない。私がヴァイルを放さないように。
「……肝に銘じておきます」
 返事に興味はないのか、ヴァイルは答えなかった。
 だが、それも当然だ。王たる彼の言葉は懇願ではなく命令なのだから。
 ヴァイルが私の顎を持ち上げる動作に抗うことなく従うと、互いの唇が重なり、離れた時には既にテエロの姿はなかった。
 哀れな男だ。
 どんなに欲しようとも手に入らないものをまだ望んでいる。まるで幼子が夜空の星を欲しがるように。
 腹よりもっと深い場所から込み上げる笑いが堪えきれず私は肩を震わせた。
「なに?」
 訝しがるヴァイルに、何でもないと答えると小さな嘆息が耳に付いた。かと思うと無言で踵を返し、ヴァイルは光射す表舞台へと帰って行く。
 その背を私もまた無言で見送り、扉が小さな軋みと重い音を奏でて閉じられた時にふと思い出す。
 散歩に出たいと言うのを忘れてしまった。
 だが、まあ良い。それ以上に愉快な経験が出来たのだから。
 体を芯から震わせる笑いに私は一人寝台に倒れこんだ。

 私を飼っているのはヴァイル。
 けれどヴァイルの心を飼っているのは――。

[ 完 ]

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック