「冠を持つ神の手」の感想やら妄想やら色々ごった煮です。
そしてこの結果である。
2010年02月24日 (水) | 編集 |
↓畳んでるSSもどきの説明

!! トッズ憎悪verA前提 !!

レハト様は成人の儀で女を選んでます。
これまでのトッズ憎悪関連SSとは全く別個の話として考えてください。
そして完全に鬱EDです。
読了後の苦情は一切受け付けません。


そろそろトッズ党員の方に

本気出して指名手配されそうな予感。


トッズが居座った結果こうなりました。
私悪くないよー。
トッズが悪いんだよー。
命が惜しいので、トッズ党員の方に見つからないよう、兎鹿の背に跨り行けるところまで逃げようと思います。
頼むぜ、相棒。

ちなみにトッズを追い出そうとしてたら可哀想な王子がやってきて輪を掛けてメンドクセエことになりました。
相打ちすればいいのに。相打ちすればいいのに。
くそっ、グレオニー党辺境支部にプライバシーとかないのかよ!!
堂々と不法侵入しやがって!!
あ、グレオニーがトッズの侵入を防がないことに問題があるのか。





 と 云 う 魔 物 の 成 れ の 果 て 


 屋上から見下ろした湖は、想像していたよりもずっと近くにあった。
 思い描いていた光景ではとてもとても遠くて、きっと足が竦んで実行になど移せないだろうと思っていたのに、現実はいとも容易く私の空想を打ち消す。
 これならいけるかもしれない。
 ただ一つ問題があるとすれば、こう近くては怪我をする程度で済んでしまうのではないかと言うことだ。それとも眼下にどこまでも広がる湖は本当は視認しているより遠くてそんな心配など無用の長物だろうか。
 手すりに肘を付き、手の平に顎を乗せて考える。
 今分かっていることと言えば、距離間隔さえまともに掴めなくなっていることだけだ。何が遠くて何が近いのか。そこにあるものは私の手の届く距離にあるのかないのか。
 まるでトッズの真意のようにゆらゆらと揺らめくばかりで頼りない。
 だが、もうじきそんな不安も感じなくて良くなる。
 そういう方法があることに、やっと気が付いた。
 ローニカはこの時間は自分の職務に忙しくて私に構っていられない。トッズはどこにいるか知らない。たぶん近くにいるのだろう。一口に近くと言ってもあくまで彼の位置から私が見えるか否かであって、すぐさま私の体に触れられるほどには近くはない。
 確信とも呼べる憶測に一人頷き、私はドレスの裾を絡げた。
 スカート部分の布が無駄に幾重にも重なっているせいで動き難いが、どうにか手すりくらいなら乗り越えられるだろう。幸い体は身軽な方だ。
 予想通りスカートに難儀することになったが、何とか手すりを乗り越え、私は手すりの向こう側――湖に近い位置に立つことに成功した。
 やはり遠近感が掴めない。よくもまあ、乗り越えている間にうっかり転落しなかったものだと自分を褒めてやりたいくらいだ。
 地上より強い風が髪を横に凪いで通る。
「なーに危ないこと事してるのかなあ、レハトは」
 不意に、軽い口調と共に物陰から姿を見せたのはトッズだった。
 首だけで振り返ると、本来立つべき場所ではない側に立つ私を訝しげな表情で見つめているトッズがいた。さしものトッズにも私が考えていることが分からないらしい。
 この世の中にトッズにも分からないことがあるのかと思うと、妙な笑みが浮かんでくる。込み上げる笑いに小さく肩を揺らすとトッズが片眉を上げ、若干口元を歪めた。
「ほら、危ないからこっち戻っておいでよ。そんなとこから落ちたら、さすがに掠り傷じゃ済まないでしょ。それにレハトが怪我したら、俺が悪くなくても俺がじじいに怒られるし」
 抑揚のない声音でほらほらと手招きするトッズに、私は緩く、けれどもはっきりとした意志を込めて首を左右に振った。間を置いてぽつりと呟く。

 ――もう疲れた。

 何を言っても駄目なのなら口などいらない。
 何をやっても届かないのなら手などいらない。
 何をしても伝わらないのなら心などいらない。
 その全てを一瞬で手放す決意をするのがひどく容易だったのが意外と言えば意外だったろうか。
 トッズの目が僅かに、嘲るように眇められる。
「ああ、なるほどね。そうやって自分こそが被害者だって主張して、俺に折れろって言うことね。でも残念だなあ。俺はレハトの言葉を信じてるし、気持ちだってちゃーんと信じてるよ。レハトはいつだって疑ってばっかりで俺のことなんてちっとも信じてくれないけどね」
 トッズがそう責めるけれど、その目が彼の言葉を完全に裏切っている。 
 愛してなどいないくせに平気で愛を物語る唇。いつかは以前のように真実の愛を口にしてくれるとずっと信じてきた。けれどそれが叶わぬ夢だと分かった時の、諦めた時の気持ちはトッズにも誰にも解るまい。
 時は違えど同じものを諦めたのに、どうして今こんなにも二人の距離は遠いのだろう。
 ぼんやりと回り始めた思考を首を振って散らす。どうやらこんな私にも感傷と言う気持ちは残っていたらしい。けれど考えなくていいことは考えないでおこう。考えれば辛くなるだけなのだから。
 目の前に広がる風景の一部としてトッズを捉えながら、ローニカに叱られると言うのなら今のうちに逃げればいい、と提案する。トッズが上手く逃げ遂せ、ローニカの追尾も届かない場所に行くくらいの時間なら待ってもいい。
「じじいに見つからないところに逃げてる間に日が暮れるって。それよりレハトがこっちに戻って来た方が断然早いでしょ」
 そうだろうか。
 ローニカがそこまで必死になってトッズを追うとは到底思えない。元々トッズがここにいることを然程快く思っていない様子だから、これ幸いとなかったことにする気がする。勿論、トッズが手ずから私を始末したとなれば話は別だろうが、それには当て嵌まらない。
 私は視線をトッズから湖へと戻した。
 ぐずぐずしていても仕方ない。いくらしがみ付いたところで結局は悪い方へしか事は流れないのだ。どれだけ足掻いても未来に変化は訪れないと知ってしまった。
 大きく息を吸い、ふと大事なことに気付く。
 ああ、そうだ。トッズに一つ聞いておかなければならないことがあった。

 ――過去も未来も一切関係なく、今この瞬間、私がトッズを愛していることを信じてくれているだろうか。

 そう問うとトッズは口端だけで笑った。
「信じてるよ」
 そうだろうとは思っていたが、実際に本人の口からはっきりと聞けて心底安堵する。 
 本当にこの一瞬だけを切り取るなら、トッズは間違いなく私を信じていると言える。そのことには何となく感付いていた。トッズが疑っているのは、今ではなく、一分一秒後の私の気持ちがどこに向いているかなのだ。
 ならば与えよう、全てを。
 欲しいと望んでくれるのなら。

 ――私の未来をトッズにあげる。

 彼に伝える術がそれしかないのなら私に迷う理由などなかった。
 どうせ私にはいらないものしか残されていないのだ。全て失くしたところでどうということもない。
 暫時トッズが眉を潜めた。私の真意を探っているのか半ば凝視するようにこちらを見ている。
 探るほどのこともあるまい。導かれる答えは自ずとただ一つなのだから。
 だから安心して欲しい。明日からトッズは何かを誰かを疑うことなどしなくて良いのだ。明日も明後日もその次の日も。例えトッズがもういらない、もう必要ないと言っても、私は未来永劫トッズだけのものになるのだから。
 そして同時に彼がここに縛られる理由も霧散する。
 トッズはトッズの望むまま、彼の進むべき道をただひたすらに。それが私の最期の願いだ。
「バカなことは止めた方がいいと思うけど?」
 馬鹿かどうか決めるのはトッズではない。私だ。そして私はこの決断を後悔しない自信がある。とは言ってもこの目論見が成功した場合、私に後悔するだけの時間など残っていようはずがないのだけれど。
「そんなことして何か意味があるの?」
 少なくとも今この瞬間の私のままでいられる。トッズが何より嫌悪する、トッズではない誰かに心寄せるかもしれない明日の私は生まれない。それはとても意味のあることに思える。
 私が首を傾げると、トッズが薄く笑った。
「なるほどねー。そういう決意を見せれば何とかなると思ってるなら甘いなあ」
 決意ではない。ただそうするだけだ。
 トッズの右足が一歩前に出るのを合図に、私は思い切り地面を蹴った。
 視界の隅で一瞬だけ、トッズが今まで見たことがない程驚いた表情をしていたのが映った気がしたがそれも錯覚かもしれない。手すりに引っ掛かった布が断末魔のような声で裂ける。
 次の瞬間に私を襲った鋭い衝撃に何もかもが途切れた。
 そうして私という人間を構成する全てが救われる。

 ――これで未来永劫、私は……

[ 完 ]

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