「冠を持つ神の手」の感想やら妄想やら色々ごった煮です。
拳と拳でわかりあ……えたんだろうか。
2010年02月08日 (月) | 編集 |
↓畳んでるSSもどきの説明

!! トッズ憎悪verA前提 !!

レハト様は成人の儀で女を選んでます。
奇跡のトッズ視点。
このレハト様の職業は麗人な予感がします。


どうしてこうなった(゜-゜)<苦情は受け付けんよ、わし
なぜこんな電波を受信したのか分析してみた結果、私も大好き!みんなも大好き!なnue様のアレ(参照:2010/01/24の記事)のエロだけを全力で拾ったんだと判明。
……ラブどこ行ったのorz
ラブメインで寄越せよ!、って言ったら憎悪ついでに何か送ってくるし。
どうやら辺境支部にはトッズ党憎悪支部に繋がる魔の洞窟があるみたいよ。

というわけで、無事トッズとの最終決着が付きました。
私としては最終のつもりだったんですが、なんだか憎悪電波が止まないので最後じゃないようです。
カビヒゲのくせに生意気な(ギリギリ

そうそう。
話的にうちの憎悪トッズシリーズの中だと、「奈落に咲く花」と「禍福の枷」の間辺りに位置するんじゃないかと思います。
レハト様なら小指一本で絆すことが出来る気がします。いつも。





 界


 鳥の小さな鳴き声で目が覚める。
 勤務外にも関わらず僅かな物音で目が覚めてしまうのは職業病だ。トッズは緩慢な動作で身を起こし、普段使い慣れた寝台より余程上等な布の感触と、傍らの体温を持った存在に漸く自分の居場所を思い出す。
 ここは第二の寵愛者と呼ばれるトッズの主の部屋だ。
 昨夜、露台から無断で侵入し有無を言わさず寝台に連れ込んだのだから、今隣でレハトが寝ているのも道理だ。
 ちらりと視線を横に流す。目元に疲労の陰を落とす彼女の眠りは深い。一糸纏わぬ姿に頼りない薄布だけを申し訳程度に被り、ただ薄く開かれた唇から絶え間なく呼吸を繰り返す。
 情事の後であるにも関わらず、その姿がこの世界に存在する何物より清らに見えるのは、己が目が狂っているのか。それとも曲げられない世の真理なのか。
 無意識のうちに剥き出しになった華奢な肩まで布を引き上げてやろうと手を伸ばしかけ、トッズはそこで俄に思い留まった。
 そんな甘やかな関係ではない。
 そうなることを望んだ時もあったが全て過去の話だ。
 一体過ぎ去りし日を未練がましく引き摺っているのはどちらか。これでは愛していると繰り返す彼女を笑えない。
 苦い笑みで口元を歪めて手を引き、穏やかな寝息をたてるレハトを見下ろした。
 信奉者によって宝石のようだと口々に称えられる瞳は今は瞼の下に姿を潜めている。眠りに捕らわれた彼女の瞳には何も映らない。トッズでさえも。
 しかし彼女が見せる、まるで彫刻のように整った無防備な横顔に、例えようのない感情が込み上げる。彼女がその美しい双眸に誰の姿も宿さないことは喜ばしいはずなのに、気が付けばトッズは衝動に付き動かされるまま、レハトの体を軽く揺すぶっていた。
 確かに眠りに抱かれた彼女は現実を何一つ目にしない。だが代わりに彼女は夢を見る。トッズにはレハトを優しく包み込む夢までもを見通す力など持ちようがない。彼女が夢で誰に会おうと、誰に愛を囁こうと、その片鱗すら窺い知ることは叶わないのだ。
 だから揺すり起こさざるを得ない。
 性質の悪い独占欲――否、ここまできたら執着心か。
 どちらにせよ、これが彼女を憎む人間の心の奥深くに埋葬した本心かと思うと、己のことながら酷く笑える。
 体の奥底からうねる様に沸く澱んだ笑いを噛み殺していると、レハトの長い睫が微かに揺れた。程なく目を覚ますだろう。
 けれどそれを確認することなく、レハトの瞼が持ち上がる前にトッズは素早く背を向け、寝台を下りる。
 長々とレハトの側で過ごすつもりはない。
 寝台を後にし、散乱した衣服を拾い上げながら袖を通していると、どこか気だるげでやや掠れた声が小さくトッズの名を呼ぶ。
 もう行くのかと幾許かの寂寞を内包した声。だが声に含まれる感情には見て見ぬ振りを決め込む。それが懸命だと知っている。
「おはよーさん。早く何か着たほうがいいんじゃない?」
 決して振り返らない、顔は見ない。
 一時の感情に押し流され、暫時でも向けるべき感情を違えたくなかった。憎むべき相手に、そうと分かっていながらそれでもまだ違う感情を残している。不本意ながら自覚があるだけに、それ以上は譲れない。
 背後で衣擦れの音が続き、ひたひたと素足が床に触れる音が更に続く。
 一度として目にしたこともないくせに、床に無造作に投げられた服を少しだけ恥ずかしそうに掻き集める仕種が容易に想像出来、そんな己に失笑する。感傷に浸るなどらしくない。
 緩く頭を振り、トッズはいつものように露台から姿を眩ませる――否、そうしようとした。出来なかったのは、不意打ちで腰に抱き付いた温もりのせいだ。
 行くなと実力行使に訴えたレハトに虚を付かれ、投げ付けるべき言葉も思い浮かばない。柔らかな感触も、布越しに伝わる温かみも、全て寝台でとうの昔に知り尽くしたはずなのに今感じるものはそれとは全く別物だった。
 振り解けない弱さが呪わしい。
「……寵愛者様が寝所に男連れ込んでるなんて知られたら、大変なんじゃないですかねー」
 一欠けらの感情も込めずに呟くが、背に感じる体温が微かに震えただけだった。怯えたのか笑ったのか、或いはそれ以外か。確かめる間もなく、それでも構わないと至極当然のようにのたまったレハトに瞠目し、トッズは零れかけた溜息を根性で呑み込んだ。
 レハトが解らない。
 どうして彼女を穢すだけの男をいとも簡単に許してしまうのか。
 どうして上辺だけの睦言を繰り返す男に全てを許してしまうのか。
 成人前は守られるだけの弱い子どもだと思っていたのに、いつの間にこんな強さを手に入れたのだろう。尤も、彼女が頑なに私心を守り続けることが強さと言えるのならば、だが。
 するりとトッズを繋ぎ止める腕が離れる。 
 本能の赴くまま体ごと振り返ると、穏やかに微笑むレハトと目が合った。彼女の無垢な唇がゆっくりとたった二文字を紡ぐ。とても愛しげに。まるで恋人と約束を交わすように。

 また。

 夜着を肩に羽織っただけの彼女はたおやかで儚げで、それでいて何よりも圧倒的な存在感を放っている。
 トッズが返事を躊躇い、眩しさに目を細めたのは一瞬だった。
 レハトの前で隙は作らない、隙は見せない。そう決めている。隙間から入り込まれて内側から食い殺されては叶わない。
「……また」
 唇に意図の読めない緩い笑みを浮かべて同じ言葉を返すとトッズは素早く踵を返し、今度こそ白み始めた景色の中へと姿を消した。

[ 完 ]

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