「冠を持つ神の手」の感想やら妄想やら色々ごった煮です。
順番は守ろう
2010年01月31日 (日) | 編集 |
↓畳んでるSSもどきの説明

!! グレオニー愛情verAED前提 !!
突撃隣のグレオニー(隣じゃねぇけど)
グレオニー@通常口調
友情出演:ハイラ・フェルツ


トッズと血みどろの戦いを繰り広げていたら、颯爽と現れたグレオニーが、非常に男らしい顔で私とトッズの間に立ちはだかり、

「俺の方が順番が先です!(キリッ」

と言ったせいで、毒気が抜けたので、仰る通り先にグレオニーを出しておくことにしました。
トッズとは一時休戦。
まあ、どうせまた後でトッズとは戦うけど。
トッコじゃなくて良かったけど。
(トッズよりトッコの方が強いし、勝てそうもない気がするのはどんな魔法が使われているのだろう)

じゃ、トッズと拳と拳で語り合ってきます。





 漏 れ 日 の 歌


 初めて訪れたグレオニーの部屋は想像とは大きく異なっていた。
 もっと服や武具で雑然としていると思っていたのだが、実際には山のような量の本がそこら中に転がっている。どれも礼法などの教本だ。
「今片付けます、片付けますからちょっと待ってて下さい!」
 慌しく本を部屋の隅に積み上げ人二人が座れる空間を捻り出すグレオニーを眺めながら、手近にあった本を何気なく手に取った。ぱらぱらと捲ると、中から紙が数枚零れ落ちる。慌てて拾って元通り挟もうとした時、書いてある文字が何とはなしに目に飛び込んできた。
 詩、だろうか。
 いつの間にグレオニーは詩作などするようになったのだろう。さすがに勝手に中を読むのは気が咎め、ぼんやりと紙を見つめて首を傾げていると、私の指の間からまるで魔法のように紙が消えた。
「こ、これはですね、これは、その、別に……」
 真っ赤になったグレオニーがしどろもどろ言い訳する。そんなに必死になって弁解するから余計に怪しいと思ってしまうのだが。
 けれど見上げたグレオニーの目の下に隈があるのを見つけ、私はそれ以上の追及をやめた。頬の辺りにも僅かながら窶れた感じが見受けられる。余程熱心に勉学に励んでいるのだろう。
 元来勉学には向かない性質のはずだ。それがこんなに懸命に本を読んでくれているのかと思うと胸温まる思いがする。
 まだ手にしてた本を返しつつ、五年でも十年でも待つからそんなに焦らなくてもいいと言うと、グレオニーは困ったように後頭部を掻いた。
「いえ、さすがにそんなに待たせるつもりは……って、もしかして掛かりますかね、そのくらい」
 不安げなグレオニーに返す言葉に困る。
 どの程度の時間が必要はか私にも分からない。全てはグレオニーの頑張り次第だ。しかしそう告げて、今以上に努力した挙句に体調を崩したり怪我を負ったりしては元も子もない。
 私はあえて返答を避け、代わりに、ちゃんと睡眠は取れているのかと別の問いを投げ掛けた。
「寝ようとは思うんですが、つい本を手にとってしまって」
 ははは、とグレオニーは笑うが笑いごとではない。
 思った通りだ。一つのことに集中し始めると他が疎かになるのは悪い癖だ。
 今はいいが、そのうち倒れてしまいかねない。私のことは気にせず横になるといいと勧めるとグレオニーの眉尻が下がった。
「いや、でも折角一緒に居られるのにそれは勿体無いと言うか」
 気持ちは有り難いし嬉しいが、私はグレオニーの体調の方が心配だ。
 だがどうすればグレオニーは納得してくれるだろうか。私が部屋に戻ったところで、自分のせいで、と無意味に落ち込むに決まっている。
 何か良い方法はないだろうか。
 取り立てて目的があったわけではないが、何か参考になるような物はないかと部屋を見回しているうちにふと閃く。
 私はすたすたとグレオニーの寝台に近付き、乗り上げた。ドレスの裾を踏ん付けて布が張ってしまわないように注意しながら正座する。私の行動の意味が読めず置いてけぼりを食らっているグレオニーに手招きをした。
「な、何ですか?」
 首を傾げながら近付いてきたグレオニーを隣に座らせ、その頭を引き寄せて腿に乗せる。一瞬で赤くなったかと思うと慌てて起き上がろうとするのを、全力で押さえ付けた。
 これなら一緒に居られるしグレオニーも眠れるしで一石二鳥だ。
 だからこのまま寝てしまって構わない。
 言いながら彼の髪を撫でると、瞬く間に耳まで朱に染まる。やはり拒まれるだろうかと少しだけ不安になったが、グレオニーはそのまま動かなかった。
「え……あ……じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて、お借りします」
 私の膝枕程度で良ければ幾らでも貸し出そう。グレオニーの努力への御褒美みたいなものだ。
 寝かせるのに会話をするも変だが、だからと言って無言でいるのも何だか落ち着かなく、私は幼い頃母が歌ってくれていた子守唄を口ずさんだ。田舎の歌だからグレオニーが知っているかどうかは定かではないが、残念ながらこの場に適した歌を私はそれしか知らない。
 グレオニーはどんな子守唄で育ったのだろうか。一度聞いてみたいものだ。 髪を撫で、子守唄を一回り歌い終える頃には膝の上のグレオニーは穏やかな寝息を立てていた。相当寝不足だったのだろう。無理をしても良い事はないのだから、睡眠ぐらいと取れば良いのに。
 グレオニーの髪を弄りつつ、寝顔を見ていると私もうとうとし始める。
 窓から差し込む体を包み込むような優しい暖かさにも負け、グレオニーも寝ているのだから問題はないだろうと判断し、私も早々に目を瞑った。
 そうしてどのくらいが経っただろう。一定の間隔で部屋の扉を叩く音が私を夢の世界から現実へと引き戻した。腿の重みは変わっていない。グレオニーはまだ眠っているようだ。
 気持ち良さそうな寝顔が起こすのに忍びなく、けれど止まないノックの音に、起こした方がいいのかと迷い始めた頃、唐突に扉は開かれた。
「おい、グレオニー……って、あ、え?」
 扉が私の視線の先にある以上、目が合うのは避けられない。
 この状況は不味いのではないだろうか。誰に見られたところで私は一向に構わないが、グレオニーはかなり構う気がする。だが今更起こしても事態は好転しないのだから、だったらこのまま寝かせてあげたい。
 扉を開けたままこちらを凝視している衛士に向かって、人差し指を唇に当てて、声を出さずに静かにするよう合図する。だが私のささやかな努力は衛士の後ろから顔を出した人物によって粉々に砕かれた。
「何、グレちゃん寝てるの? 鍋当番なんだけど」
 溜息交じりのハイラの声に、私はグレオニーを揺すった。さすがに病気や用事があったわけでもないのに当番を怠るのは不味いだろう。
 二、三度軽く揺すると微かに眉を顰めてグレオニーが目を開ける。
 まだ幾分寝ぼけた様子だが、鍋当番であることを告げると低く唸って腿の上から私を見上げた。
「あー……もうそんな時間かー……」
「もうそんな時間だよ。悪いね、幸せを満喫してるところを邪魔して」
「……ハ、ハイラ!? フェルツまで……あ、ああ、そうかそうだよな俺今日当番だもんな! レハト様、ではそういうことで、失礼します!!」
 飛び起きたかと思うとやけに早口で捲くし立て、その手にハイラたちの襟首を掴むとグレオニーは慌しく部屋を飛び出して行った。
 ハイラの抗議の声が廊下から聞こえてくる。
 一人取り残される形となった私と言えば、温もりと重みを失った腿と共に成り行きをただ見守るしかない。
 グレオニーの挙動があまりにも早くて寝心地を聞きそびれてしまった。
 良く眠れたのだろうか?
 眠れたのならいいのだけれど。

[ 完 ]

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